こんにちは。春名佑紀です。
みなさん、学習指導要領って知ってますか?
教員はもちろん、教育関係の方なら必ず知っているのですが、実は一般の方にはあまり知られていません。
ただ、お子さんをもつ方であれば、とってもかかわりのあるものです。
今日は、その学習指導要領についてお話したいと思います。
学校で習う内容がここにある! 学習指導要領の変遷
学習指導要領は、簡単にいうと、各校種、学年において何を学ぶのかが書かれたものです。
この学習指導要領をもとに、学校では教えることが決められています。
この学習指導要領にはいくつかの特徴があります。
①約10年ごとに改訂があること
②細かく内容が決められていること
③その内容に対して「解説」が書かれていること
かなりおおざっぱですが、このようなポイントがあります。
校種ごと(小・中・高)や学年ごと(2学年ごとの場合もある)に内容が決められています。
この内容に沿って、各学校では年間指導計画を作成したり、教科書が作られたりしています。
ポイントの①で、改訂が行われると書きましたが、ここ何回は約10年のスパンで行われています。そして、その改訂ごとに、様々なトピックスがあります。
(今回は小学校の内容を取り上げます。)
例えば、
平成4年改訂:小学校1・2年生に「生活科」の設置
平成14年改訂:「総合的な学習の時間の設置」
「ゆとり」ある教育
完全週休2日制
(円周率が“3”になった時)
平成23年改訂:「確かな学力」の育成
基礎・基本の定着・学力向上を強化
平成32年(令和2年)改訂:「特別の教科 道徳」の設置
小学校5・6年「外国語」設置
プログラミング必修
※年は全面実施年、小学校に準ずる
かなり抜粋ですが、上の内容を見ると、聞いたことのある言葉があるでしょう。
記憶に新しいのは、平成14年から実施の「ゆとり世代」という言葉を生んだ改訂です。この時期は、「個性の尊重」というのがかなり叫ばれたときで、探求型の学習が脚光を浴びていました。
しかし、その後学力低下がみられて、慌てて「学力」といい始めたのが次の平成23年の改訂へと繋がります。
このように、学習指導要領の改訂は、その時の社会情勢に応じて変更をしてきました。そしてこの内容によって、私たちが学ぶ内容が決められているわけです。
学習指導要領の改訂は誰のためか?
では、学習指導要領の改訂は、誰が何の目的で行っているのしょう?
主に話し合うのは中教審(中央教育審議会)という、文部科学大臣の命により集められた有識者で組織です。
2年ほどかけて現在の教育の内容や成果、社会情勢などを踏まえて、次の学習指導要領の内容を決めていきます。
もちろん、私はこのメンバーにいるわけではないので、普段どんな話をしているかはわかりませんが、中間発表の内容と最終的に決まった学習指導要領の内容を見ると、どんな話し合いが行われたのかを推測することはできます。
今日はその一つをご紹介します。
最新の学習指導要領の改訂は、昨年の令和2年に、小学校ですでにスタートしています。
実はこの改訂が行われる5年ほど前の中間発表の時に、「道徳の教科化」という話は出ていました。その時の情勢として、いじめ問題や子どもたちの自殺問題が大きく取り上げられていて、「生命尊重」の教育の重要性が高まっていた時です。
道徳の充実という話は、以前からあったのですが、もっと強く打ち出さないといけないということから「教科化」という流れになったのでしょう。
しかしここで一つ問題が生じます。
学校において「教科」には、どうしても切り離せないことが付きまといます。
それは
評価です。
道徳を教科にするには、道徳の学習ののちに評価をしなければなりません。
例えば、児童の「道徳」の学習についてどうだったかを教師が評価するのです。
ちょっとわかりにくいかもしれませんが、児童に対して、
「君は道徳の考え方がとても優れている」
とか
「君は道徳心に欠けるね」
などと評価を教師ができるわけがありません。
仮にそんなことをしたとして、それが子どもの教育にプラスになるとはとても考えにくいです。さらに言うと、人が人の「道徳」について評価をするほど、私は人間できていないと感じます。
そこで、最終的に落ち着いたのは、
「文面評価」で
「特別の教科 道徳」
という冠が付いたというわけです。
(道徳の評価については、また別の回で説明をしようと思います。)
このように、学習指導要領には、時代背景と教育内容の必要性が話し合われて決まっていきます。
当然、「道徳」の専門家が中教審にいたことは言うまでもありません。
このことから、道徳については、ある程度学習指導要領改訂で入ってくることが予想されたのですが、意外だったのが「外国語」と「プログラミング」です。
この2点については、ある時突然登場し、「外国語」に至っては、あっさり教科化してしまいました。
ここから考えられるのは、
中教審に、「外国語」の教科化を推進したい人や「プログラミング」を取り入れたい人がいるというということです。
かなり穿った見方をすれば、そこには利権やお金のにおいがプンプンします。
それはさておき、こうして晴れて学習指導要領が改訂されて、実施されれば、否応なく子どもたちはこれらを学ぶことになります。
ここで大事なのは、果たしてこれらの内容は子どもたちにとって必要なことなのでしょうか?
教育活動にムダなことはない、というが・・・
今までいろいろな変遷はあるにせよ、ただ1点
子どもたちの教育のために
を目指して、学習指導要領は改訂されてきました。
どれもこれも、教育を考える上で間違った話はないし、極論を言えば、教育にムダなものなど何もありません。
人生における経験が、全てその人の血肉となり財産となるように、やったことにはムダはないのですが、10年ごとにコロコロと変わっていく内容を見ていると、行き当たりばったり感は否めません。
それによって振り回されるのは紛れもなく子どもたちです。
ゆとり教育時代に生まれた「ゆとり世代」というワードは、たまたまその時期に学校にいたというだけでつけられたもので、本人たちには何の責任もありません。また、教育との関連性も実はわかっていません。
文科省や中教審が何も考えずに内容を決めているとは思いませんが、もう少し先を見据えた「日本の教育」という道筋を決めないと、筋が通っていない場当たり的な教育がこれからも行われてしまうのではないかと心配になります。
まとめ
学習指導要領について、ご理解いただけましたか?少しでも興味をもってもらえたら嬉しいです。
学習指導要領の本文は文科省のHPに載っています。なかなか読むのはしんどいと思いますが、ご興味のある方はぜひ。
最新令和2年改訂に内容、道徳・外国語・プログラミングについては、また詳しくお話をしていきたいと思います。
お子さんが日々学んでいる内容が、学習指導要領の中には詰まっています。本当にその内容は必要なのかどんな教育効果が得られるのか、我々が関心をもち、真に子どもたちに必要なことが学校で教えられるようになることが本来の目的かなと思っています。
参考になったら嬉しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
コメント
[…] 今回は、最新令和2年4から実施の学習指導要領改訂の目玉、「特別の教科道徳」について書いてみました。 […]
[…] 今日は2020年改訂新学習指導要領の目玉、「外国語の教科化」について話をしていきます。 […]
[…] 新学習指導要領の内容解説ということで、本日は「プログラミング」です。 […]